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2012年10月28日 (日)

「美術館の社会的役割と横浜美術館の挑戦」~横浜まちづくり塾に参加して~

 1018日(木)の夜、横浜まちづくり塾に初参加した。横浜まちづくり塾は、元横浜市技監で法政大学名誉教授の田村明さん(故人)が主宰した通称「田村塾」を引き継ぎ、5年ほど前にスタートした。今年9月で50回を迎える、知る人ぞ知る塾。詳細は、以下のURLを参照。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121017-00000024-kana-l14

今回のゲストは、逢坂恵理子さん(横浜美術館館長)。演題は、「美術館の社会的役割と横浜美術館の挑戦」だった。

Oosaka

■本人の自己紹介

逢坂さんは、2009年4月に横浜美術館館長に就任。5代目の館長となる。初代から4代までの館長は、すべて男性で研究者タイプ。私(逢坂さん)は、はじめての女性館長。現代アートを専門とし、アート・マネージメントに長く従事してきた。


横浜美術館に来る前には、水戸芸術館、森美術館で働いていた。横浜美術館は、水戸芸術館や森美術館とは、かなり性格が異なる。水戸芸は、コレクションがない。だから、美術館ではなく、センターだった。なぜなら、博物館法で、博物館とは、収蔵品、館長、専用の土地・建物、150日以上の開館という条件を満たすことが定められているから。

 
森美術館は、ビルの51階に入っている。今は、コレクションがあるが、沢山あるわけではない。海外とのネットワークを重視している美術館である。森社長とのつながりから、国会議員や大使館員がよく来る。すべてのスタッフがバイリンガルなので、すぐに英語で対応できる。


横浜美術館は、約1万点のコレクションがある。館長に着任して、まず、このコレクションを「売り」にしたいと思った。日本の美術館は、常設展よりも巡回展が中心だが、海外(欧米)の美術館は、館内のコレクションを見せることがメインとなっている。


■現代日本の課題について

美術館の話をする前に、昨今の日本が置かれた状況を俯瞰しておきたい。

 

GDP世界第3位の経済大国である一方、日本の将来に不安を感じている人が多い。今の日本は、効率至上主義でストレス社会であり、年間3万人以上の自殺者があり、大人から子どもまで、いじめが激化している。


また、数値のみによる価値判断が重視されることで、思考停止、想像力減退が著しい。また、単純化・マニュアル社会化が、臨機応変な対処力、自由な発想を奪い、創造力を減退させている。

 

■課題を突破するために!

 では、何が私たちを幸せにするのか?

 

○数値化できないものへの目配りが重要。そして、曖昧さの受容も。白黒ではないグレーゾーンへの気づきが大切である。

○アナログ的コミュニケーションを復活させよう。人間味のある身の丈(ヒューマンスケール)の生活への回帰という傾向。例えば、若いアーティストは、手の感触を大事にする。最近は、木彫や刺繍を使った作品をつくるアーティストが少なくない。

 GDPからGNHへ。量から質へ、物質的満足から精神的満足へ。

 

 

 ■何故アートなのか

アートの意義・特徴(?)を考えてみよう。

 

1 創造力 

 新しい価値を創造する力がある。実験精神やオリジナリティを大切にする。

2 想像力

 ひとつの正解がない世界。複眼的なものの見方を鍛えることができる。目に見えないものを感じとることも。

3 読解力

 作品と対話しながら、目の前にある作品の背後にあるものを読み取ること。

4 多様な異分野とのコミュニケーション力

 美術領域の拡張が起きている。美術以外のジャンルをつなげる。例えば、映画、食、宇宙科学、医学、エコロジーなどなど。

5 他者の受容力

 自分と異なる考え方や価値観があることを知る。民族紛争・宗教紛争の多くは、他者への非寛容から生まれる。自分と異なる考えの人と共存ができない。これからは、「共存」が大きなキーワード。

そして、こんなこともおっしゃっていました。アートを「美術」と訳したことで、誤解が生まれやすくなった。アートは、アルス(技術)が語源。アートは美しいものばかりではない。みにくいもの、おぞましいものを提示するのもアートである。

 

■美術館の4つの機能

調査研究、企画展示、収集保存、教育普及(ワークショッ、レクチャー、シンポジウムなど)。美術館は、生きる美意識を伝える全人教育の場であり、実験と探求の場。

 

同時代美術の紹介と次世代育成をするところであり、新しい価値を創造する場である。

 

○スライド(PPT)を見ながら、美術館建築の変遷と特徴ある美術館の紹介

・横浜美術館(1989年丹下健三)

・水戸芸術館(1990年磯崎新)

・金沢21世紀美術館(2004年SANAA

・グッゲンハイム美術館(1997年フランク・ゲーリー)スペイン・ビルバオ

・ポール・ゲッティー美術館(1997年リチャード・マイヤー)米国ロサンゼルス

テートモダン(2000年発電所改造)英国ロンドン

・十和田市現代美術館(2008年西沢立衛)青森県

・豊島美術館(2010年西沢立衛)香川県 

 

○街へと広がる美術館活動の紹介

・カフェ・イン・水戸(2002)、イチハラヒロコ「いつでもどこでも誰とでも。」

・草間彌生 ルイ・ヴィトン・ショウウィンドウ(2012

・卓球(光州ビエンナーレ2012)リクリット・ティラバーニ

 

■横浜市の創造都市政策の紹介

アートのクリエイティブな視点を街に活かす。美術館とは異なるオルタナティブ・スペースの活動。

BANKART NYK

・黄金町エリアマネージメントセンター

・宇徳ビル4・5階

・寿町

 こうした活動があることで、美術館が活きる。厚みが出てくる。

 

■横浜美術館の挑戦とは?

 

・横浜開港以降の進取の気性を伝える場

4つの方向性 創造性、発信性、協働性、未来性

 

・魅力ある企画提案 →海外発信

コレクションの魅力発信と保存継承

鑑賞と創作+市民サポート

 

○事例紹介として、ヨコハマトリエンナーレ2011を取り上げる。

・ウーゴ・ロンティノーネ

・トビアス・レーベルガー(目が見えない人とつながっている)

・シガリット・ランダウ

・ジュン・グエン=ハシシバ

・「人間性回復のチャンス」島袋道浩

 

○現在横浜美術館が取り組んでいる活動

 ・コレクションのサポートを目的に、フレンズという市民団体を立ち上げた。100人以上の会員がいる。

・美術館の近隣企業のビジネスマン・ウーマンを対象に、夜7時から、イベントを開催。絵をみて、即興でオルガンを弾く、など。新しい客層の開拓につながっている。

・目が見えない人と一緒に、対話しながら作品を鑑賞する。

・車椅子の人に、キャプションの見やすい位置を聴く。

・子どものアトリエ。フリーゾーンという参加型イベントを開催。小さい頃、フリーゾーンを体験した親が、子どもを連れてくるようになった。20年、30年というスパンで、美術館活動を評価する必要がある。

■創造性を高める9つのポイント(ティナ・シーリグ)

最後に、ティナ・シーリグの「創造性を高める9つのポイント」を紹介。

1,観察

 よく見る、読解力を高める

2,自分の前提、思い込みを疑う

 先入観をとりはらう

3,他人の意見を聞く

他者の存在に気づく

4,関連性のないものを組み合わせ、つなぐ

5,問題のとらえ方をかえる

6,空間が重要

クリエイティブな異空間

7,チームワーク、異なった役割を理解

異なる能力を認める=総合力発揮
8,失敗を恐れずに実践する

負を正に転ずる柔軟性、七転び八起き
9,意欲的態度

独自の発想へ

 

最後に、「企業家とアーティストは、発想に似たところがある」とおっしゃっていました。以上、当日のメモをもとに講義の内容を要約しました。聞き違いがあるかもしれません。どうかご容赦を! >逢坂恵理子さん

2012年10月20日 (土)

伊東大田楽を観て感じたこと

10月6日(土)の夜、伊東市の「伊東大田楽」というイベントを見てきた。夜7時20分頃にスタートし、終了は8時40分頃。場所は、伊東駅近くの特設ステージと市道南口線という道路約50mほど。僕が会場に到着した時には、伊豆の太鼓グループの演奏が始まっていた(大田楽の前座の位置づけか?)

Daidengaku「大田楽」とはどんなイベントなのだろうか? 大田楽とは、「中世日本で爆発的に流行し、やがて衰退した謎の芸能「田楽」を総合芸術家野村万之丞氏がわずかな資料・文献を元に復元し、ワルツやサンバなど西洋のリズムを取り入れる等、数々の新しい試みにより単なる古典の再現にとどまらず、平成の世に作り上げた壮大でダイナミックな野外劇(伊東市観光サイトから」とのこと。

音楽、衣装、舞(踊り)。どれも、世界の多様な文化が複雑にブレンドされ、大変興味深い。なんといっても、地元の3歳くらいの子どもから熟年男女まで、多世代の住民が舞台に登場し、その親戚が、道路の沿道から、自分の子ども・孫・甥姪等の活躍を見守っている姿は、何とも微笑ましい。当日、僕のすぐ近くに陣取ったおばあちゃんが、「あれが私の孫なんですよ」と解説してくれた。地元全体を巻き込んだ祝祭空間が、そこに出現していた。祭から遠ざかっていた僕は、久しぶりに興奮し、帰宅後も、しばらくの間太鼓の音が脳裏に響いていた。

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なお、大田楽の内容・構成については、以下のサイトに詳しく紹介されている。
http://act-jt.jp/daidengaku/

このイベントの主催は地元の実行委員会だが、都内に事務所を置くアート集団「特定非営利活動法人ACT.JT」が制作協力している。イベント当日の夕方、商店街の通りで稽古をしている様子を少しだけ見学することができた。そこでは、ACT.JTのスタッフと思われる人物が、熱心に子どもたちに演技指導を行なっていた。

さて、「特定非営利活動法人ACT.JT」とはどんな団体なのか? ACT.JTのサイトには、「(野村)万之丞がキーワードとした「古くて新しい」をテーマに古典芸能や民俗芸能を中心に、老若男女が年齢の別なく楽しめる催しを作り、未来へ向けて「心」を伝える活動を、広く展開しています」とある。さらに詳しい情報は、以下のURLを参照。
http://act-jt.jp/

日本各地に民俗芸能があるが、近年(特に都市部において)、担い手不足が深刻になっている。大田楽を観ながら、日本古来の民俗芸能に新たな要素を加え、地域の老若男女を巻き込んで、現代に蘇生させる「祭・芸能プロデューサー」の仕事が、これから益々重要になるのではないかと感じた。コミュニティアートは、決して劇場やミュージアムというハコの中だけで創造されるものではない。「土の人(伊東市住民)」と「風の人(ACT.JT)」が出会い、路上に瞬間的に現れる「大田楽」という芸能空間こそ、コミュニティアートの本質を体現しているのではないかと思った(あまり自信ないけど)。

美大や音大など、アート系大学を卒業した人材のうち、一定比率の卒業生が、地域に入り、地元の人々と一緒に芸能・祭りを現代風に再生させる業務に就くような仕組みづくりができないだろうか。全国各地でアートNPOが活躍しているが、民俗芸能へのコミットメントをもっと増やせないだろうか。といような妄想をしていたら、急に和太鼓を習いたくなった。見る○○もよいが、踊る○○は、もっと楽しい。

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