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2012年11月10日 (土)

アートで創る多様性のある社会(主催:国際交流基金)参加報告

国際交流基金が主催した「アートで創る多様性のある社会」に参加した。しんじゅくアートプロジェクトのEさんから、この催しへのお誘いを受けたことがきっかけだ。フィリピン(マニラ、ダバオ)と日本(新宿)をつなぎ、4名のアーティストの協力で実現した2つのワークショップ。その様子を動画と関係者の語りで紹介する報告会イベントだった。

http://www.jpf.go.jp/j/intel/new/1210/10-01.html
 

○日時 20121103日(日)午後1時~3時

○会場 国際交流基金さくらホール

○内容

【第1部】

Rap in Tondo2×しんじゅくアートプロジェクト」のコラボが成立した経緯

★三富章恵さん(国際交流基金マニラ日本文化センター、司会)から、「Rap in Tondo2」の概要説明

 

2011年5月にマニラとダバオで開催。日、独、仏、フィリピンのヒップホップ・アーティスト(ダンス、DJなど) による、貧困地区または紛争地域に暮らす若者を対象とした ワークショップと公演を開催するプロジェクト。
http://d.hatena.ne.jp/japanfoundation/20121030/p1

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(フィリピン・ダバオでのワークショップ動画)

上記プロジェクトの様子を動画で放映(7分程度)した後、さらに解説が続く。親に虐待を受けたり、不良グループに出入りしている子どもたちを集めて、「子どもの権利」をテーマに作詞・作曲をするワークショップを実施した。心に抱える悩みを暴力でしか表わせない子どもたちに、音楽を通じて自らの感情を表現することを学んでもらうことが目的。

 

その後、三富さんは、フィリピン以外で上記の活動を展開できないかと考えていた矢先、海老原周子さん(しんじゅくアートプロジェクト副代表)のfacebookを見ていたら、外国につながる子どもを対象にダンス等のワークショップをやっていることを知る。協力してワークショップができないかと思い、彼女にメッセージを送ったところ、「やりましょう」との返事がきて、このコラボ企画が実現することになった。これは、セレンディピティ?

 

★ゲスト・スピーカー(アーティスト)から

 

O.G.Sacredさん

私はマニラのTondo出身です。トンドは貧困地区です。トンド出身というと、偏見の目で見られることが多いです。怖がられることもあります。しかし、今、トンドの子どもは、希望をもっています。自分がフィリピンで有名になった時、トンド出身者であることを多くの人に知ってほしいと思いました。トンドの子どもだって、世界に立ち向かう能力があることを見せたかったのです。トンドには複数のギャング集団があり、そこと関係のある子どもたちに、ラップを教えています。ラップを教えることで、ギャング集団間の抗争から彼らを救うことができるのです。

GOWさん

フィリピンとスコットランドの混血。20年以上日本に住んでいる。自己紹介をすると、スコットランド出身という部分にだけ着目して、「すごい、イギリス出身なんだ」という反応が返ってくることが多い。日本人の中に、世界に対するステレオタイプがあると思う。最近のソーシャルメディアの威力は凄い。ある時、知り合いの小学生が、Facebookでフレンド申請してきた。今は、物理的な距離があっても、簡単につながれる。

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(左がO.G.Sacredさん、右がGOWさん)

・おみゆきCHANNELBig Benさん、Young-Gさん

ヒップ・ホップのBGMをつくっている。山梨県の一宮町出身。地元に町村合併の話がもちあがり、自分の気持を伝えたいと思って、ヒップ・ホップを始めた。「スティル・一宮」という7人編成の音楽ユニットが母体で、おみゆきCHANNELは、その中の音楽プロデュース部門。2010年に、アルバムを出した。「おみゆき」の語源は、地元の神様。ヒップ・ホップは、都会的なイメージが強いが、実際には多様なルーツがある。地元の商工会主催の祭りで「ライブをやってくれ」と頼まれることが多い。一宮町は桃が有名なので、桃畑のラップ曲をつくった。
http://event.maryjoy.net/article/44633085.html

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(左がBig Benさん、右がYoung-Gさん

・海老原さん

自分の出身国や地元の文化に誇りをもっていることが、今日のアーティストに共通している。同じルーツのお姉さんが活躍する姿を見せることで、外国ルーツの子どもたちがエンパワーされる。
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(作詞ワークショップの方法を解説する海老原さん)
 

【第2部
 

★おみゆきCHANNELGOWO.G.Sacredの順で、パフォーマンスの披露。

★しんじゅくアートプロジェクトの様子を動画で上映

 

★海老原さんから動画の解説

雑誌等から好きな「こどば」を選び、それをもとの作詞していく。参加者の中で、フィリピンにつながる子が、自分から通訳をかって出てくれた。また、一人の子が、自分からO.G.Sacredさんにタガログ語で話しかけた。その時、すごくホッとした表情をしていた。実は、海老原さんは、その子がフィリピン・ルーツとは知らなかったそうだ。

 

子どもたちは、ワークショップが終わった後も、活動を続けたいと言った。普段は、自分から積極的に声を出すのが難しい子どもたちだが…。その後、フィリピンにつながる子が、曲の続きをつくっていった。後で振り返ってみると、その活動が、日本語学習にもなっていることがわかった。

 

★ゲスト・スピーカー(アーティスト)の感想

 

・O.G.Sacredさん

とても楽しかったです。今まで心の一部がかけていたのが、このプロジェクトで完成したように思う。私が子どもたちに教えると思っていたが、実際には子どもたちから教わることが多かった。

・GOWさん

しばらく曲をつくれず、スランプ状態にあった。子どもたちと一緒にプロジェクトをやることで、色々な気づきがあった。一人で考えすぎている時は、誰かと何か一緒にやることで状況が打開できると思った。

・おみゆきCHANNELYoung-Gさん

作品として残すのはいいなー。音楽にかぎらず、モノを残すのは大事。外国につながる子どもたちが受けているストレスは多いのではないか。僕がそれを本当に理解するのは難しい。しかし、音楽を通じて、子どもたちに「楽しさ」を感じてもらうことはできる。中には、途中で帰ってしまった子や、イヤイヤ参加している子もいたが、一緒に章節を書き、レコーディングして作品を聴いた時には、満足そうな顔を変わっていた。

 

★海老原さんから、参加アーティストに、「どんなきっかけでアーティストになったのか? どんなロール・モデルがあったのか?」という質問があった。

 

GOWさん

私は、スコットランド、アメリカ、フィリピン、日本と転々とした。フィリピンの子どもたちは、普段から道端で大きな声で歌っている。しかし、日本で同じことをしたら、大人から怒られる。多文化を活かせる一番よい方法は、曲に中に多言語を混ぜること。私たちの幼少期には、子ども対象のこんなワークショップはなかった。ある意味恵まれているといえる。

・おみゆきCHANNELさん

Big Ben

ヒップ・ホップは、それほど詳しくない。中学時代は、ソウルとジャズにはまっていた。その後、Young-Gらと出会う中で、ラップも聞くようになった。

Young-G

学校で、子どもたちが自分たちのルーツを隠さなければいけない状況が問題ではないか。多文化を尊重する考え方を、多くの人に広めることが必要だと思う。日本社会は、ありのままの自分を出すのが難しい。ヒップ・ホップの世界も、土着性を思う存分に出せていない。東京にあわせている部分がある。

 

O.G.Sacredさん

子どもたちは、自分で壁をつくっている。その壁を取り除くと、自分の気持が外に出てくる。子どもたちに大人が生き方の方向性を示し、自信を持たせることが必要だ。

●感想

ヒップ・ホップのアーティストとの協働作業を通じて、少しずつ自分の心の深層に仕舞われている感情を表出し、他者への信頼を呼び戻していく子どもたち。こうしたプロセスは、フィリピンの子どもも、新宿に暮らす外国ルーツの子どもも共通だ。しんじゅくアートプロジェクトのような活動がもっと広がることを期待すると同時に、学校や地域社会が、もっと懐の深い“場”になればいいなと思った。それを実現するのは容易なことではないのだが…(トホホ)。

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