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2012年11月12日 (月)

「ニートがひらく幸福社会ニッポン」二神能基著を読んで

本屋に行ったら偶然この本を見つけたので、読んでみた。

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僕が過去に読んだニート本(教育学者や労働政策の研究者が書いたもの)は、その多くが「ニート=若者の就労問題」という認識に立ち、その原因と解決策を探る立場から書かれていた。そこで語られるニートの原因は、若者のコミュニケーション能力の低下や、雇用機会の減少と時代遅れの職業訓練という労働政策上の課題に集約されがちであった。もしこれがニートの根本原因なら、コミュニケーション能力を高める教育機会と、若者の職業訓練の機会を増やしさえすれば、劇的にニート現象が解消されるはずである。
 

しかし、上記の処方箋は、間違いではないにしても、どこか本質をとらえていないように感じる。コミュニケーション能力は、年回数回程度のワークショップに参加することで劇的に高まるわけではないし、また、職業訓練の機会を増やすだけで、長期間ひきこもり状態にあった若者が、すぐに安定的に働くようになるとは思えない。問題はそんなに単純ではないのだ。

 

古いタイプの公共職業訓練のあり方を見直し、「いま、ここ」のニーズに合わせて、新しいタイプのコースを開発していくことは必要であるが、若者一人ひとりの状況にきめ細かく対応するための制度(カウンセリングやソーシャルワーク的なアプローチ)を伴いない限り、訓練の内容を手直しするだけでは、決して有効な解決策とはならないだろう。

 

なお、ニートの原因の多くを発達障害に求める説も流布している。典型的なのが、厚労省が出したガイドライン。確かに、ニート状態にある若者の一定割合に、発達障害があることは事実なのであろう(僕の身近にも実例がある)。しかし、多くのニートが発達障害であるという認識は、現象を正しくとらえているようには思えない。どこからがどこまでが発達障害で、ここからは健常という線引はそれほど簡単ではなく、かりに発達障害という見立てが正しくても、発達障害が、ストレートにニートに結びつくわけでもない。

 

発達障害をもった若者への支援は、ぜひ拡充して欲しいと思うが、ニートの原因は、決して発達障害に限らない。では、発達障害以外のニートは、どうして社会に出られないのだろうか。

 

二神の最新作である『ニートがひらく幸福社会ニッポン』は、親世代が持つ20世紀的型人生観(成長神話と上昇志向)と、若者の持つ21世紀型人生観(縮小社会という前提、脱力志向)との相克が、ニート現象を生み出す原因であると喝破する。

 

モノがあふれる一方で低成長が続く社会状況の中で、若者の価値観は、確実に変わってきている。「大人(親世代)の価値観こそ変える必要がある」と述べる二神の見解は、拝聴に値する。でも、親世代の価値観を変えること、これが結構難しいんだよねー(>自分)。

 

「コミュニケーション能力が高くなければダメ人間」という風潮の中で、本の中で紹介される「ありのままでいいんだよ」というメッセージには、救われる思いがする。「若者に“ハイパー・メリトクラシー”という新たな能力が求められている」という本田由紀の分析には共感するが、しかし、ハイパー・メリトクラシー社会へのシフトに対する対抗策が「専門性を磨くこと(職業教育の拡充)」というのは、ちょっと違うのではないかと言いたい(当面の処方箋という意味で提案しているのだろうが…)。「あるがままの存在を、まるごと受けとめること」ができる懐の深い社会を構想したいですねぇー。

 

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