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2012年12月 3日 (月)

フォーラム「外国につながる子どもの就学前支援を考える」報告メモ

○日 時:2012122日(日)14:0016:30
 

会場:神奈川韓国会館6階ホール
 

プログラム:
 

(1)「外国につながる子どもの発達と学校生活への適応サポート」 

    小島祥美さん(愛知淑徳大学准教授)
 

(2)「神奈川県内の外国につながる子どもの就学に係わる現状と課題」 

    吉田美穂さん(NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ、中央大学非常勤講師)

(3)「行政とNPOの連携による就学前支援の取り組み」

 渡辺卓さん(大和市教育委員会)

 矢沢悦子さん(NPO法人日本ペルー共生協会(AJAPE)) 

(4)パネルディスカッション「子どもたちがスムーズに学校生活を始めるために」 

小島祥美さん、吉田美穂さん、渡辺卓さん、矢沢悦子さん

【解説】:外国人児童ではなく、「外国につながる」子どもという表現を使う理由は、国際結婚から生まれる子どもの国籍は日本籍となり、統計上は、日本人児童とみなされるため。外国籍児童ではないが、言語や文化など、他の日本人児童に比べて、特別な支援が必要となることが多い。本フォーラムでは、こうした子どもたちを含めた支援体制のあり方について考えていくという趣旨。

小島さん報告骨子

1990年代後半、外国人児童生徒の不就学問題に関心を持った小島さんは、子どもたちの実態把握が急務と考え、関西圏の自治体に調査依頼をするが、ことごとく断られ、最後にたどりついたのが岐阜県可児市だった。可児市は、不就学の実態調査に理解を示し、彼女に2003年から外国人住民への悉皆調査を依頼(2年間にわたる調査の結果報告が、彼女の博士論文の骨格をなしている)。
 

上記調査から、外国につながる子どもの世話をする施設がないため、ほとんどの保護者が無認可保育園に子どもを預けていること。また、無認可保育園で過ごす子どもたちが、結果として不就学児童となる流れが見えてきた。
 

その後、彼女は、2005年から市教育委員会が委嘱する「外国人児童生徒コーディネーター」として外国人児童の不就学問題に取り組むことになる。コーディネーターをしながら、プレスクール(就学前教育の場)の必要性に気づいていった。
 

2006年度から2008年度にかけて、愛知県が、4市でプレスクールのモデル事業を実施。そして、2009年からプレスクール運営マニュアルづくりを始める。小島さんは、可児市の実績をかわれ、マニュアルの作成委員となる。
 

201111月現在、中部地域・関西圏でのプレスクールは、7箇所。行政(教育委員会以外)、教育委員会、NPO委託の3つの類型がある。実施場所は、託児所、保育園、NPO内など。
 

プレスクールの効果としては、3つある。 

・入学後の学級編成や指導計画を立てるのに役立つ 

・外国人児童が入学前に日本の学校文化を疑似体験できる 

・外国人児童の保護者が子どもの状況や学校の様子を理解しやすくなる

3

 
吉田さん報告骨子

 

外国人児童生徒の問題に関わる中で、次第に、子どもの背後にいる保護者のことをきちんと見ていかねばならないと感じるようになった。県の福祉部局が募集していた「かながわ子ども・子育て支援推進調査研究事業」の助成を受け、外国につながる子ども支援をテーマに、子育ての状況、子育て支援に関する意見、保護者の日本語力と日本語学習、保護者の仕事・生活等等の項目について調査した。
 

調査は、三段階で設計した。 

まず、県内の学習支援教室(★)に、保護者支援に取り組んでいるか否かをアンケート調査した。その中から、保護者支援に取り組む団体を9団体選出し、ヒアリング調査を実施した。さらに、9団体に調査に協力してくれる保護者を紹介してもらい、ヒアリングをした。

★学習支援教室とは、外国につながる子どもを対象に、日本語教育と教科補習をする場所。公民館、青少年会館、福祉会館等を会場にボランティア団体が運営をしている。神奈川県内に57団体ある。アンケートの回収率は約65%。

その結果、保護者自身の問題についての相談が多いことがわかった(例えば、会社の書類・給与明細が読めない、夫婦関係の悩み、将来への不安など)。こうした相談を受けた時、学習支援教室の目的を超えて、どこまで関わっていいのか迷うという回答があった。
 

それ以外には、支援教室と学校との連携が難しい。保護者が忙しくて、子どもに注意が向いていない、など。

こうした課題に対する対応策としては、保護者に学習支援教室の写真を見せるなど、工夫をしている教室があった。また、保護者と積極的に関わっていきたいという教室が多い。
 

○調査を通じて見えてきたこと
 

・日本の小学校は、保護者による家庭での学習支援を期待 

・3団体がプレスクールを開始 

 →生活習慣づくり、学力保障、保護者へのエンパワーメント 

・思春期を中心とする親子の葛藤 

 →言語コミュニケーション、呼び寄せ家族が抱える課題、在留資格 

・母国の教育文化を意識した保護者への情報提供 

 →子どもの「口ごたえ」に驚くフィリピンの母親 

・保護者に寄り添う生活相談 

 →9団体のうち5団体が生活相談を実施。伴奏型支援を展開しているところがある
 

○これからの支援・10の柱 

・保護者の日本語学習支援 

・保護者への通訳支援、文書等の翻訳、ルビふり支援 

・母語保障の支援 

・親子間のコミュニケーションを支える支援 

・保護者の母国の教育制度や学校文化をふまえた上での情報提供 

・上級学校進学に向けた情報提供と学習支援 

・プレスクールの定着と拡充 

・生活相談の充実 

・最も困難な層への伴走型支援 

・学習支援教室間の学び合いと学習支援教室への支援
 

伴走型支援に関していえば、内閣府の「パーソナル・サポート・サービス」事業の外国人版が必要である。

2


○渡辺さん、矢沢さん報告骨子

(渡辺さん)
プレスクールとプレクラスの違い。プレスクールは、学校入学前の場。プレクラスは、入学・転入後の初期指導の場。

大和市にプレスクールを導入しようと思った時、市役所の上層部を説得するツールとして、学習指導要領が使えると思った。というのは、新・学習指導要領の中に、「グローバル化への対応」「幼稚園・小学校・中学校の連携」「特別支援教育の充実」の3つが入っていたからである。

グローバル社会の中で、外国人児童への特別な配慮が必要。また、幼稚園と小学校連携という命題がある中で、就学前教育としてのプレスクールは必要。さらに、特別支援教育の中には、言葉や文化が壁となり学習遅滞の発生する子どもが対象になる。というように説明できる。

アハペが支援する子どもの中に、幼稚圏に通っていないペルーの子がいた。発達障害の症状が見られるので、半年後に、何もケアをせずに学校に入ったら、問題が発生するだろうと思い、カウンセリングをすることにした。その結果、対応方法の見通しがついた。

(矢沢さん)
2009年度に、文科省の「虹の架け橋教室」が始まり、同時に、プレスクールを開始した。2009年度・2010年度は、アハペが単独で実施。

プレスクールに参加した子どもは、のべ16名。毎回6・7名が参加。愛知県が作成したプレスクール運営マニュアルが大変参考になった。 

私(矢沢さん)の見立てでは、小1入学時で、ひらがなが読める・書ける子どもは9割。小学校の先生は、ひらがなは小1で教えるので、入学前指導は不要と言うが、外国につながる子どもの場合、入学してから学んだのでは遅い。 

○プレスクールの環境整備

・子どもが次回も来たいと思える関係、空間をつくりだす。 

・子どもたち一人ひとりが、理解し身につけられるように指導する。
 

知識を詰め込むなのではなく、自分で考える、やりたいと思う、他人をまねる力をつけていくことが重要である。

語彙調査の結果、語彙力が大幅に伸びた子どもと、あまり伸びない子がいた。語彙力が伸びない要因は次の3つに集約されると思われる(サンプル少ないので、あくまで印象論)。 

・日本語ゼロスタートの子ども

・途中から日本語をスタートした子ども 

・母語が通じる環境にいる子ども
 

例えば、スペイン語話者が多い環境にいると、スペイン語で用が足りてしまうので、日本語力がなかなか伸びない。
 

プレスクール終了後のフォローアップ体制については、プレスクールを終了した16名のうち、12名は「虹の架け橋教室」に通っている。
 

○今後の課題 

・近隣他市からの申込への対応 

・保護者への対応 

・母語での対応 

・授業内容(カリキュラムやシラバス、開催時間、回数などの見直し)
 

アハペの単独事業から大和市の協働事業を変わってよかった点は、プレスクールとプレクラスがシームレスでつながること。また、NPO単独よりも、行政と協働した方が、広報力が大きい。

1

以上、当日のメモをもとにした報告です。 

●感想

学習支援教室を運営するNPO・ボランティア団体と行政をつなぐこと。また、支援教室の実践から見える課題を可視化し、課題解決に向けた仕組みを創出したり、行政へ政策提案するなどのアクションを起こす人材が求められている。海外(英国や米国等)では、こうした実践は、ソーシャルワーカーやユースワーカーが担うのだが、日本の場合、福祉職は、生活保護のケースワーカーや児童相談所の児童福祉士など、施設に雇用された役割限定の専門職がほとんどで(社会福祉協議会の中に、コミュニティワーク的な働きをしている実践者はいるものの)、コミュニティに介入していく実践(コミュニティワーク)を行う専門家が重要視されていない(質・量ともに乏しい)。

これまで僕は、多文化ソーシャルワーカーという職種の制度化を考え、各所で提案してきた。また、同じような目的で、多文化社会コーディネーターという名称の専門職が提案され、東京外国語大学の中に人材育成のコースが設置されてきた。しかし、双方ともに制度化には至っていない。

最近、僕は、多文化○○という専門職ではなく、コミュニティ・オーガナイザーという、もう少し幅広の専門家を養成することが望ましいのではないかと思うようになった。一方、ユースワーカー(青少年問題に特化したソーシャルワーカー。立命館大学大学院にコースあり)への思いも消えない。現在、バラバラに展開されている近接分野の専門家養成を、もう少し統合できないものか。この辺の事情については、以前、東京外国語大学多言語多文化教育研究センター主催の研究会で発表したことがある。

★多言語・多文化ブックレット6 「文化間対立の超克を目指して-現場で考える教育と人材養成」(2007年度発行)
http://www.tufs.ac.jp/blog/ts/g/cemmer/publication_03.html

今後も、時代に必要な「コミュニティ・オーガナイザー」のことについて考えていきたい。

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