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2013年2月18日 (月)

「怒りのソウル・日本以上の『格差社会』を生きる韓国」を読んで

「怒りのソウル・日本以上の『格差社会』を生きる韓国」雨宮処凛、金曜日、2008年。5年ほど前の本。タイトルが気になって読んだ。
http://www.kinyobi.co.jp/publish/publish_detail.php?no=426

雨宮によれば、韓国の非正規労働者は、全体の約50%。賃金も、正規労働者の半分だという。中でも、20代の非正規労働者の割合は、90%に達し、「88ウオン世代」と呼ばれる。「88ウオン」とは、20代の非正規雇用者の平均賃金で、日本円にして8万8千円程度。

韓国の大学進学率は80%を超えており、高学歴者が多いものの、大学を卒業してもなかなか正規の職につけない現実がある。公務員の志願者が多く、地方公務員試験の競争率は約100倍といわれる。20代の5%しか、大企業や官公庁に就職できないらしい。

韓国が、このような凄まじい競争社会・格差社会になってしまった背景に、1997年の経済危機の直後にIMFの緊急融資を受けたことがあると言われる。IMFは、融資の条件として韓国政府に対して構造改革を要求し、その結果、労働市場の規制緩和を進める2つの法律(=労働者派遣法・整理解雇法)が1998年に成立。この政策がワーキングプア発生の原因になったのだという。

日本と同様、韓国でも、20代の死因の第1位は自殺だそうだ。大学を出ても正規職にありつけない若者の絶望感が背景にあるのではないか? 気になって、各国の自殺率を調べてみたら、現在、自殺率のトップはリトアニアで、韓国は世界第2位。とはいえ、リトアニアと韓国のそれは僅差であり、韓国の自殺率が世界トップクラスであることに変わりはない。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2770.html

こうした厳しい格差社会の中で、オルタナティブな生き方を模索する社会運動が生まれてきているようだ。雨宮は本の中で二つの事例を取り上げる。

一つは、アーティスト集団「芸術の都市社会研究所」による、Squatting(空き家の“違法”占拠)だ。リーダーは、金江(キムガン)で、パリに留学経験のある女性。パリ留学の際にSquattingに興味を持ち、帰国後、韓国初のSquattingを行う。数年間未使用のまま放置されていた「芸術人会館」という建物を一時的に占拠したのだ。この企てはすぐに中止に追い込まれたが、周到に計画された彼女たちの試み(事前に弁護士に相談し、マスコミに事前に通報)は、社会にセンセーションを巻き起こしたという。

二つ目の例は、研究空間「スユ+ノモ」。「研究者たちが共同で立ち上げた研究と共同生活のためのコミューン的な場所」だ。約60人の正会員と200~300人のセミナー会員の会費で運営される組織で、会員には大学の非常勤職員やフリーターがなっているらしい。場所はソウル市内のビルの一角にあり、教室のほか、大講義室、ヨガ室、厨房、カフェ、育児室を備える。会員が食べる食材は、知り合いの農村コミュニティから無料で送ってもらうという(贈与経済)。

雨宮は、「スユ+ノモ」を「老若男女が集まり、御飯を食べたり講義を聞いたり勉強会を開いたり話し合ったり、かと思えば子どもが遊んでいたり昼寝をしたりヨガをしたり、そんな目の前の『ごった煮』な空間が、奇跡的なことのように思えた」と描写する。

また、「スユ+ノモ」の酋長の高(コ)は、雨宮の質問に答えて、「資本主義社会の中で苦しめられている人たちに、そういう外部が作れるということを気づかせ、そういう生き方ができるように触発することが私たちの課題、目標であると言えます」と語る。

「スユ+ノモ」をめぐる雨宮の文章と高(コ)の語りを読みながら、トランジション・タウン、そして「芝の家」を連想した。
●トランジション・タウン
●芝の家

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