無料ブログはココログ

« 多文化ソーシャルワーク実践者講座フォローアップ研修会報告 | トップページ | 2008年学習指導要領改定の舞台裏~文藝春秋のルポから~ »

2013年12月 8日 (日)

「コミュニティオーガナイジング入門」参加報告

●日時:2013年12月1日(日)14時~17時

●会場:東洋大学白山キャンパス1号館

●主催:YEN(環境分野で活動する産官学民関係者のゆるやかなネットワーク)。

●講師:鎌田華乃子さん(コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップ・イン・ ジャパン実行委員会代表)

http://communityorganizing.jp/

ハーバードケネディスクールに留学しMaster in Public Administration(行政学修士)のプログラムを修了した鎌田華乃子さんが講師となり、「コミュニティオーガナイジング」の5つのプロセスのうち、主にバグリックナラティブの技法について解説。最後に演習を行った。

話を聴きながら、DST(デジタル・ストーリー・テリング)との関連が気になった。というのは、「物語の力が人を動かす」という点で、両者に共通性を感じたからだ。DSTの概要については、以下のURLを参照。
●デジタル・ストーリーテリング(DST)研究所
http://www.learning-v.jp/dst/


【鎌田さん発言要旨】

自分より体の大きな魚にいつも追いかけられ、脅威を感じていた小魚「スイミー」が、互いに協力し、一体になれば、大きな魚を凌ぐパワーを発揮できるという、絵本「スイミー」の話に触れた後、「コミュニティオーガナイジングは、スイミーの話とどこか似たところがある」というイントロからスタート。

D_2

以下は、当日の講義要約。
-----------------------------------------------
現在、米国の大統領となっているオバマさんは、かつて、コミュニティオーガナイザーだった。 

私(鎌田さん)は、ブルックリンにオフィスのあるNPOでインターンをしていたことがある。今日はまず、そのNPOで経験した、コミュニティオーガナイジング体験について話をする。

 

インターン先のNPOは、米国の市民権を持たない移民労働者に対して最低賃金を守らないスーパーマーケット「Associated Market」への「不買キャンペーン」を展開していた。近隣住民に、移住労働者が抱える課題とキャンペーンの趣旨を丁寧に説明したところ、自宅の窓に不買を推奨するステッカーを貼ってくれる住民が現れるなど、徐々に運動が広がっていった。その結果、スーパーマーケットの売上が激減し、スーパーの経営者は、労働者と最低賃金を守る雇用契約書を交わすことになった。

 

二つ目の事例は、ニューヨーク市の警察官が、白人以外の人種に対して頻繁に職務質問を繰り返し、人権侵害をしている状況を憂慮し、こうした現状を変えるためのキャンペーン活動を展開したことである。

 

上記の趣旨に賛同した約50団体が連合を形成し、「Stop & Frisk」というキャンペーンを展開した。市会議員にロビー活動をしたり、次期市長選の候補者を招いてのディベート大会を開催するなどした。その結果、幅広い市民層から支持を受け、不要な職務質問行為を減らすことに成功した。

 

さて、米国以外の国に目を向けると、英国では、政府がコミュニティオーガナイザー養成プログラムを開催している。その理由は、政府の財政事情が悪化し、十分な住民サービスを提供できないため、コミュニティの問題は地域住民自身が解決せざるをえない状況になっているからである。

 

さて、コミュニティオーガナイザーは日々何をしているかというと、ミーティングを開いていることが多い。私(鎌田さん)の場合は、高校生をサポートする活動をしていたこともあり、普段は、高校生とミーティングをしたり、事務処理をしたり、助成金申請書を書くなどの作業をしていた。

 

NPOの財源は、約7億で、そのうち5億円は助成金。ロックフェラー財団等の大型財団以外にも大小様々な財団から助成金を受給している。助成金以外には、市からの補助金1億円と事業収入など。企業から助成金をもらうこともある。J&Pモルガンから助成金を受けたことがある。

 

なお、職員の給料は、新卒者年収が約350万円。数年経験を積むと650万円程度。さらにディレクターになると1千万円程度もらえる。NPOが雇用する弁護士の給料も、それほど悪くない。やりがいを求めてNPOで働く弁護士もいる。なお、財団が助成する対象経費には、団体運営費(人件費含む)とプロジェクト助成費の二つがある。

 

コミュニティオーガナイザーは、専門分野に対して助言するのではなく、地域に入っていて住民の声を聴きながら地域課題を発見していく。コミュニティオーガナイザーになるためには、約2週間の研修を受けた後、現場で1年間くらい実地訓練を積むことで、一人前になるプロセスを踏む。研修の内容は、住民との信頼の形成やファシリテーション技法など。

 

ケネディスクールでコミュニティオーガナイジングを教えるガンツ先生によれば、コミュニティオーガナイジングの要素は次の5つになる。

1,パブリックナラティブ(ストーリーで関心喚起)

2,関係構築(信頼関係の構築、一対一の関係が重要)

3,チーム構築(コアになるチームをつくる)

4,戦略立案(リソース把握、関係者分析〈賛成・反対者の地図作り〉、変革仮説構築、バリア特定、フレームワーク提供)

5,アクション(やる気を引き出す、運動は楽しくないと続かない)

 

コミュニティオーガナイジングの成功・失敗を計る指標は、プロジェクトの目的によって異なる。サービス提供型のプロジェクトなら、利用者数や利用率の増加。社会変革型のプロジェクトなら、議会で通過した法律の本数など。

 

パブリックナラティブとは何か。

あなたはストーリーの力を信じるか? 私(鎌田さん)は、留学当初、ストーリーの力をあまり信じていなかった。しかし、コミュニティオーガナイジングの授業で、パブリックナラティブを書いているうちに、次第に理解するようになっていった。

 

今年、ガンツ先生をゲスト講師として、東大でコミュニティオーガナイジングの授業があった。私(鎌田さん)は、アシスタントを務めることになり、見本を見せるために、自分のパブリックナラティブを書くことになった。最初は難しかったが、周りのサポートを受けて何とか完成させた。

 

パブリックナラティブのプレゼンの最後に、今年12月にガンツ先生を招聘してのワークショップ企画があるので、興味のある人は手伝って欲しいというメッセージを発したところ、半数以上の学生が「手伝いをしたい」と声を上げてくれた。この時、ナラティブの力を感じた。

 

授業の中で、パブリックナラティブは、リーダーシップの1つだと習った。コミュニティオーガナイジングにおけるリーダーシップとは、「動詞である」と言われる。不確実な状況の中で、他の人が動ける状況をつくり出していくのがリーダーシップといえる。

 

人は、物語に囲まれて生きている。人は、小さい頃から、両親や教師、友人など、様々な人々からの沢山の経験を聞いて、成長する。物語には、人を動かす力が潜んでいる。

 

人が何か行動を起こす時には、二つの要素が関係していると言われる。1つは、「ストラテジー(戦略)」であり、もう1つは、人の心を動かす「ナラティブ」である。人は、心が動いた時に、はじめて行動する。

A

 

人は、特定の価値観に基いて行動する。しかし、人がある価値観に基いて実際に行動をするには、「感情が動く」というプロセスが不可欠である。Martha Nussbaumという倫理哲学者は、「感情を経験できなければ、選択するための価値観をもてない」「感情と価値観と行動の3つは密接なつながりがある」と言っている。

 

感情と言っても色々な内容がある。行動を阻害する感情としては、無関心だったり、恐怖だったり、自己懐疑心などがある。一方、行動を促進する感情としては、怒りだったり、希望だったり、自己効力感などがある。

 

ストーリーをどう作っていくかと言うと、ストーリーには、筋と主人公とモラル(教訓)がある。一番大事なのは、筋である。例えば、私は、今日朝起きて講義の準備をして、ここに来ました。これは面白いですか? つまらないですよね。これは筋とは言えない。どうやったら面白くできるか? 

 

(会場からストーリーを出してもらい、参加型で物語をつくった。)

午後1時に起きた。電車が止まった。仕方がなく歩いていた。交通事故に巻き込まれた。そして怪我をした。負傷しながら歩いていた。トラックが来て目的地まで送ってくれることになった。15分遅刻で会場に着き、ワークショップをすることができた。

 

二つのストーリーを比較すると、後者の方が断然面白い。何故なのか。後者は、到着するまでに困難があり、それを乗り越えたから。また、登場人物が増えている。具体的なイメージが出てきて、想像しやすくなった。不確実なもの、困難なものに直面し、それを乗り越えていく部分に、人は共感する。

 

何故人は、物語に引きこまれていくのか? 不確実な状況を乗り越えていくという他者の経験を聴くことで、人生をより豊かにしていくネイチャーを人は持っているからではないか。人は、自分たちの未来をつくるために、主体性を発揮していくことに充実感を感じるのではないか?

B

 

では、よいプロットをつくるにはどうやったらいいのか。チャレンジ、チョイス、アウトカムの要素が重要である。

C

 

パブリックナラティブの3要素とは、まずはセルフ(私の選択)、次にUS(アス)=私たちが共有すべき価値、そして、NOW(ナウ)=今でしょ、緊急性ということ。オバマ大統領の若いころの演説の映像を見ながら、この3要素を分析していった。

(オバマ演説の映像を見た後、会場との質疑を通じて、3要素を分析した)

 

オバマは、聴衆の心に情景が思い浮かぶようなエピソードを演説の中に入れている。ディティールの描き込みが大事である。彼の演説は、セルフ、アス、ナウの3要素が見事に入っている。話をする時、順番は変えてもよい。

 

この後、パブリックナラティブの実習をした。その前にコーチングについてミニ講義あり。

 

コーチングが何故重要かと言うと、水槽で泳ぐ魚の存在を考えると分かり易い。魚は生まれてからずっと水槽の中にいるので、自分自身では、水の存在に気づくことができない。これと同様、人は、なかなか自分のことを客観的にみることが難しい。コーチングの利点は、自分でも気づかない部分を可視化し、また、自分の中に潜む生き生きとしたストーリーを相手が引き出してくれる点だ。

----------------------------------------------

実習に入る前に、参加者の一人=Yさんから、見本のプレゼンをしていただいた。その後、まず、5分間で個々人のパブリックナラティブをつくり、隣に座っている人に2分間で自分のストーリーを語った。その後、相手からコーチングを受けた。ここで選手交代し、同じことを繰り返した。

 

2分間で、自分の価値観をわかり易く伝えること。また、相手の心に具体的な情景が浮かぶように語ることは、非常に難しかった。米国のように、小さい頃からスピーチの訓練を受ける機会のない日本人には、パブリックナラティブの創作は予想以上に難しい作業だった。

 

今回は、コミュニティオーガナイジングの5つのプロセスのうち、パブリックナラティブの入門編のみの体験だった。今月の中旬には、2日間かけての本格的なワークショップが開催される予定だが、すでに満員御礼とのこと。また機会があれば、鎌田さんのワークショップに参加したい。


 

« 多文化ソーシャルワーク実践者講座フォローアップ研修会報告 | トップページ | 2008年学習指導要領改定の舞台裏~文藝春秋のルポから~ »

まちづくり」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。